2010年6月23日水曜日

浜名湖ボート転覆女子中学生死亡事故の呆れた人災ぶり


浜名湖で20人が乗ったボート転覆。女子中学生1名が行方不明

≪静岡県警によると、18日午後3時半ごろ、浜松市北区の浜名湖で、20人が乗ったボートが転覆、中学生らが投げ出された。間もなく10人以上が救出されたが、少なくとも女子生徒1人の行方が分からなくなっている。地元消防などが救助に当たっている。≫

当初は単なる転覆事故と思われた。しかし、行方不明女子生徒の死亡が確認されたことで、この事故が指導していた青年の家と引率した中学校側の杜撰な管理のもとで発生した事故であることが明らかになった。

浜名湖ボート転覆事故 指導員同乗せず「船酔いで漕げない」 女子中学生(12)死亡 静岡 

≪浜名湖のボート転覆事故で、カッターボートの操船を指導した「三ケ日青年の家」を所管する静岡県教育委員会は18日夜、記者会見し、ボートの転覆がモーターボートの曳航中に起きたことを明らかにした。
また、死亡した女子中学生は豊橋市の中学校1年と判明した。≫


職員が管理した中で事故が発生したのである。

≪訓練にはボート指導の専門家である青年の家職員4人と同校の教諭4人が2人ずつ4艇に分かれて乗船。転覆したボートに大人は教諭2人のみで職員はおらず、無線で指導を受けながら訓練していた。 ≫

と、最初からいい加減な指導ぶりである。

≪ボートは午後2時ごろ、沖合に向けて出発。うち1艇のボートの教諭から別のボートの職員に無線で「ひどい船酔いでこれ以上漕げない」と連絡があった。≫

かなりの悪天候だったことが判る。にもかかわらず、学校も青年の家も漫然と訓練を強行したのである。

≪別のボートからは教師が海に飛び込み、生徒たちに「がんばれ」と励まし続けたという。 ≫
こんなところで精神論を振りかざしても仕方あるまい。遭難時の基本マニュアルを理解しておく方が先決である。

≪死亡した女子生徒は、転覆したボートの下に潜り込んでしまい、救出に約2時間半かかった。≫

「救出に約2時間半かかった」この時点でこの記事を書いた記者は教育委員会の発表を鵜呑みにしている。子供でも判りそうな嘘なのに…。

浜名湖ボート転覆女子中学生死亡事故 校長「悪天候時のルール知らなかった。注意報が出ていたことも知らなかった」

この校長が直接引率し、決行判断をした。校長がルール「知らなかった」のならば、教えなかった青年の家の責任はどうなるのだろうか?
要するに、校長と青年の家とで責任のなすり合いをしているのである。

浜名湖ボート転覆、学校に苦情の電話が殺到

抗議を寄せられても仕方ない学校や教育委員会の対応ぶりだが、実際に苦情電話をかけているのは大半が「愉快犯」である。

浜名湖ボート転覆死亡事故 青年の家所長「潜って確認できたのは3人だけ。さらに確認することは体力的にもできなかった」

≪所長は転覆したボートの下に潜って生徒3人を助け出したが、「同じ場所で発見された女子生徒の姿は確認できなかった」とうなだれた。 ≫

この所長が個人的に大活躍したのは事実だろう。ボートの裏側は狭い空間だが視界が全く利かない。

≪救出後、生徒から「女子生徒が見当たらない」と聞いたが、「潜って確認できたのは3人だけ。女子生徒の行方をさらに確認することは体力的にもできなかった」と話した。≫

問題なのは、他の職員との緊急時の連携である。平素の段階で確立していなければならないのだが、その努力は怠っていたようだ。

浜名湖ボート転覆事故 50分間行方不明に気付かず

≪愛知県の中学生ら20人が乗ったボートが浜名湖で転覆し、中学1年の女子生徒が死亡した事故で、現地で情報が錯綜し、消防隊が行方不明者の存在に気付くまでに事故発生から約50分間経過していたことが21日、救助関係者への取材で分かった。≫

これでは助かる命も助からない。

≪青年の家には参加者の一覧名簿しかなく、どの生徒がどのボートに乗ったかなど緊急時を想定した名簿を作成していなかったことも明らかになった。≫

青年の家もさることながら、人員掌握義務があるのは学校だろう。

この記事の以降の文章を読んでみると、県教委がトカゲのしっぽ切りに出たことが判る。

「死にたくないよー!」 転覆ボートの中の暗闇で、生徒ら…死亡の女子中学生以外は、ボートの上で救助待つ

≪教諭の一人は校長に、「モーターボートが現場にまた戻ると 思ったが波が非常に高く、二次被害を考えてかボートが再び出動しなかった」と話しているという。≫

冷静な判断といえばそれまでだが、他人の命より自分の命の方が可愛いのはやむを得まい。

≪安否確認の混乱について校長は、「青年の家に引き揚げてきた人を対象に誰がいるかを点呼で確認したが、転覆現場ではわからない状況だった」と話す。≫

要するに「おろおろしていただけ」だったようだ。判断力や決断力に優れた人物が校長に選ばれるシステムではないので致し方ない。

≪豊橋市教委は20日夜、会見で「救助先が青年の家、ホテル、病院の3カ所に分かれてしまい、全員の安否確認が遅れたのは事実だ」と説明している。≫

学校と市教委と県教委の三つどもえのなすり合いである。

≪教諭2人のうち、女性教諭は聞き取りに応じている。もう1人の男性教諭は出勤しているが体調が優れず、聞き取りができていない。校長は「2人から詳しく聞いて、現場で教諭がどういう判断をしたか解明しないといけないが、教諭も生徒も息も絶え絶えの状態だった」と話す。 ≫

この男性教諭はどんな状況で出勤してきたのだろうか?
しかし、この校長は自分が現場にいたくせに、責任を平教員に押しつけたがっているようにも受け取れる言動である。
体力的にピンピンしているのは校長だけのようだ。

≪浜松市消防局によると、行方不明者が1人いることを同局が把握したのは18日午後4時18分。「ボートが転覆した」との通報があった午後3時31分から47分が 経過していた。≫

極めて不幸な事故だが、点呼確認という基本がしっかりできていれば命が助かっていた可能性は高い。遠い異国の人跡未踏の地で発生した事故ではなく、浜名湖という都市近郊で起こった事件にしては連絡の不徹底ぶりが悲しい。

≪全員無事との情報も入り乱れる中、転覆したボートの船底にまたがって助けを待っていた生徒らの救助に向かった水難隊員が、人数を数えて 確認したという。行方不明者の氏名がわかったのは午後4時半過ぎ。≫

確認もせずに「全員無事」と情報を入れた者の責任は重いが、パニック状況では希望的観測を事実と誤認してしまうことは心理的に発生しやすい。

≪素潜りで捜索していたが、天候の悪化もあり発見できなかった。ダイバーが午後5時51分に女子生徒をボートの中から発見した。 ≫

ダイバーの手配に1時間以上かかっている。
日本の災害対策の現状から考えれば1時間程度でよくダイバーが駆けつけられたというべきか。

正直なところ、実際に事故が発生してしまえば、こんな状況になってもやむをえないだろう。
日本人そのものもパニックに弱い側面がある。

平地での事故と違って、山岳事故や海難事故は現場の急変に対処しづらい。
実際に発生してしまえば、今回のように手遅れになってしまうケースが多い。

どうせ日本の教育委員会の発想だから、中学校の野外教育を自粛させる通達を出すものと思われるが、徒に自粛するのではなく、事故を発生させない対策を充分検討してもらいたいものである。


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