2010年7月20日火曜日

iPad用の書籍スキャン商売に日本書籍出版協会「違法だ、訴えてやる!」


本が全く売れず、本屋が今では雑貨屋と化しているのは周知の事実である。そんな中で本屋にはさらなる強敵が現れた。

iPadには本をスキャンして電子文書化する機能がある。ウサギ小屋に住み、子供部屋はあっても書斎など奥さんに作らせてもらえず、居間の片隅で小さくなっているお父さんにとって蔵書の増加は悩みの種である。
本を置くスペースがないので、奥さんから「邪魔だ、捨てろ」と強要されて泣く泣く愛書を処分ということになる。
そんなお父さんにとってiPadはまさに救世主である。スキャンして電子文書化してしまえば、スペースは全くいらない。本棚に鎮座していた書籍の全部がハードディスクか外部メモリーに収まってしまうのだからありがたい。

本ブログは何もiPadの宣伝をするつもりはない。iPadは基本的にスマートフォンの域を出ず、パソコンとしての機能は限定されている。高い値段を出して購入しなくても中国製のゾロゾロ商品で充分かもしれないし、後れを取った他メーカーも、より高機能のタブレットPCの販売を計画している。
慌ててiPadに飛びつくことはない。

冷静に考えてみれば、プリンタ複合機があれば、誰でもスキャンは可能である。
「…なもん、うちにはねえぞ!」と言う御仁もいるだろうが、プリンタはインク商法なので、本体自体は馬鹿みたいに安い。スキャン目的で購入すればさほど元手もかからないし。馬鹿高いインク代も関係ない。

しかし、一枚一枚スキャンするのは面倒くさい。電子文書化すればいいとは頭で解っていても、そんなことをいちいちやっている暇はないぞという諸兄も多いことだろう。

そんな無精な人のためにさらなる救世主が現れた。スキャン代行業者である。ニーズに合わせていろんな職業が登場するものだ。

≪一般向けのスキャン代行業者はiPadの国内発売前から現れた。代表的な仕組みは、ホームページで登録した会員が業者に本を発送し1冊100円前後の料金を振り込み、業者がその本を裁断しスキャナーで読み取り電子文書化。
会員は電子文書を業者のサーバーからダウンロードしたり、DVD-R(別料金)で受け取る。≫


1冊100円程度なら、パチンコで負けたと思えば50冊くらい一気に電子文書化できる。これは繁盛するだろう。

低下価格書籍スキャンサービス

ところが、好事魔多し。すぐ邪魔をするいけずが現れた。日本書籍出版協会である。
「訴えてやる!」と騒ぎ出したのだ。

【著作権】本のスキャン、代行は違法?iPad人気で注文殺到…日本書籍出版協会「黙認するつもりはない」

いったい、どこが「違法」なのか首をかしげたくなるが、彼らの主張は以下の通りである。

≪一方、大手出版社など約460社が加盟する書協は「利用者が著作権者の許可を取ったか業者は確認していない。協会として黙認するつもりはない」という。
著作権法に詳しい北村行夫弁護士は「著作権法で認められている私的複製は自分でやるのが原則。家族でもない第三者が料金を取って代行するのは、違法行為」と話す。≫


どうも、「著作権者の許可がなければコピーはまかりならん」という理屈らしい。実際この理屈でごり押しすれば、法的には訴え可能だ。

せっかくのアイデア商法だったが、大手出版業界の圧力の前に廃業に追い込まれそうな状況だ。時代のあだ花 として消え去る運命か?

背景にあるのは言わずと知れた出版不況である。生き残りをかけた出版社と印刷屋の壮絶バトルである。本来は刎頸の友の関係だった両業界だが、餌が激減したので共食いを始めたのだ。
既成の餌では少なすぎて営業が成り立たず、新たな餌として注目したのが電子出版であることは両業界は同じだが、印刷屋の方が条件は不利である。本業の印刷が成り立たないからだ。で、注目したのがスキャン技術である。電子写植以降確立したDTPにより、短時間低コストの製本化はお手の物である。それまでは出版社の依頼で製本したのを直接個人から依頼を取ろうという戦略だ。
無料ブログなどでも、電子出版機能が必ず付いている。カモが現れれば輪転機を回せるシステムだ。
今回の場合はスキャンだけがメシの種なので、思いっきり低コスト化が可能だ。

ところが、電子出版に活路を求めていた出版業界にとってはとんでもない話である。

電子書店パピレス

電子書籍の値段は漫画でこそ300円台だが、一般書籍は1000円以上。大体、紙製に比べて気持ち安いか程度の値段だ。

それを一冊100円でコピーされたらたまらない。したがって、「営業妨害するな」ということになるのだ。

しかし、日本書籍出版協会の主張がおかしいのは明らかである。購入者へ著作権の二重取りを期待していたとしか考えられない。依頼者は既に紙製本を所有しており、その段階で著作権料は払い込み済みである。したがって、所有物をどう加工しようが本人の自由だ。
その点は日本書籍出版協会も認めざるを得ず、「本人がスキャンする分にはかまわない」と言っている。しかし、印刷屋が稼ぐのはおもしろくないのである。
日本書籍出版協会のこの鼻息だと、そのうち漫画の回し読みも訴訟の対象になってしまうかもしれない。

漫画家と新古書店との間で著作権法を巡りトラブルになっていたが、上記の理屈がまかり通るなら、古書販売も個人以外が販売する場合は著作権者の許可が必要ということになりはしないか?

私の予想だが、この問題では第3勢力が現れて悶着を引き起こしそうである。製紙業界だ。出版社も印刷屋も紙離れしては製紙業界もおもしろくない。何やら因縁をつけてくる可能性が考えられる。

ペーパーレス化が進行中。書店・印刷・製紙業界の動きは?

今のところ、製紙業界は日本から逃げ出すことしか考えていないようだが…。


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