2011年5月29日日曜日

太陽電池の製造コストを100分の1まで下げた金沢工大教授の残念な大発明


(元記事)太陽電池の製造コストを100分の1まで下げることに成功 金沢工大教授が開発

≪金沢工大工学部の南内嗣(ただつぐ)、宮田俊弘の両教授は27日までに、銅板と亜鉛 を組み合わせた新型太陽電池の基板を開発した。
従来のシリコン製に比べ100分の1の 費用で製造できるとしている。≫

これを読む限り、画期的な発明のようにも思われる。無尽蔵な太陽からエネルギーを得る太陽光発電は、燃料コストを全く必要としないので、一見省エネルギーの鑑のようにも受け取れる。
しかし、その割に普及しないのは、それなりの事情があるからだ。他の発電形式に較べて発電効率が極めて悪く、場所を取る上、製造コストも高いのである。いくら燃料がいらなくても、電池の作るのに莫大なエネルギーは必要ならば、ちっとも「エコ」ではない。

そんな事情を知ってか、知らずか、菅首相はサミットで各国に向かっていい加減な公約をぶち上げてきた。

≪福島第1原発事故を経て政府が「サンライズ計画」を発表し太陽熱エネルギーが関心を集める中、≫

しかし、太陽光発電研究者にとっては、突然の菅首相の心変わりは追い風だった。菅首相はこれまで風力発電推進派だったのである。菅氏が太陽族に変身した理由は不明だが、慎太郎の小説に感化されたのだろうか?

≪両教授は「低コストの太陽電池をぜひ実用化させたい」と意気込んでいる。≫

同じクリーンエネルギー族でも太陽族と風族は犬猿の仲である。結論的には両者とも箸にも棒にもかからない役立たずの金食い虫なのだが、利権がらみで激烈な予算の奪い合いを演じている。
ただでさえ借金まみれで左前だった日本の国家財政は未曾有の大災害でより厳しい状況に置かれ、今や風前の灯火である。
研究開発費も大幅な縮小を余儀なくされている。
その中で、つい最近まで肩で風を切っていた原発利権族が原発事故でこけてしまった。
原発被害者への補償や放射能除去、破損原発の廃炉化などで、今後天文学的な出費が予想されるが、そこは縦割り行政のありがたさで「研究開発費」にはさほど影響を与えない。本来原発に振り分けられるはずだった「研究開発費」が今後はクリーンエネルギーに変更されることがほぼ確実視されているのである。
原発に関する研究開発費は、「もんじゅ」を見るまでもなく、何をやっても「兆」単位で金が動く。まさに利権の王道だった。それに較べてクリーンエネルギー関連の研究開発予算など桁が3つ違うレベルだった。

先ほど「太陽光発電と風力発電が全くの役立たず」と評したが、それは「政府が示す方向が」という意味であって、日本でも他の発電手段が困難な地域用とか、効率よく発電可能な外国に設置する方法とか、電子機器の補助電源用などクリーンエネルギーが研究される余地は充分にある。また、今回のような地道な基礎研究に対しても、それなりに予算を配分しないと日本の地盤沈下に歯止めはかからなくなってしまうであろうことは言うまでもない。

本ブログとしては、金沢工大のこの研究そのものは否定しないが、発表のやり方が、いかにも予算ほしさが見え見えの内容だったので、批判しているのである。
こんなエキセントリックなやり方でない、もっと実直な発表をして貰いたかったのである。

≪新型太陽電池の基板は電熱器で焼いた銅板(多結晶亜酸化銅)に亜鉛膜を重ねて作った 。
太陽光が基板に当たると青と緑色の光を吸収して電気に変える仕組みで、光から電気への変換効率は3・8%。
1980年代に同じ手法で米国で製作された基板の変換効率1・ 8%の2倍程度に高まり、実用化のめどがついたとしている。≫

「CIS系(カルコパイライト系)太陽電池」と呼ばれている系統である。「製造法や材料のバリエーションが豊富で、低コスト品から高性能品まで対応できるのが特長」とのことだ。高性能のものは20%の変換効率を記録している。

今回の新発明が「新型」と言えるほどのものかはさておき、30年前と較べて2倍程度しか効率アップがなされていないのはかなり致命的にも思えるのだが…。

≪南、宮田両教授によると、従来のシリコン製太陽電池の基板は直径15センチの円盤状で製造に約8千円かかるの対し、今回、開発した基板は数十円で作ることができる。製造 コストをおよそ100分の1まで下げることで、一戸当たり約300万円かかるとされる太陽光発電施設の設置費も大幅に抑えることが可能になるという。≫

(参考資料)太陽電池 2組

今時「直径15センチの円盤状で製造に約8千円」とはどんな高級品だろうか?
コストの高い単結晶ものでも原価は1000円程度で、多結晶やアモルファスだとその数分の一のコストだ。したがって、ひいき目に見てもコストパフォーマンスは十分の一程度である。

(参考記事)太陽電池

≪価格については、セル1Wあたりの価格は仕入れる量によってかなり変わる。また、最近では海外からのセルも入ってくるようになり、 輸送コストがそのままセルの単価に盛り込まれる。

近年は技術開発が進み、1Wあたり約100円という薄膜型の安価な製品も実用化され、注目を集めている。識者によれば、2010年から本格的に価格競争が始まるとされている。

ただし、上記の価格はパネル本体の価格であり、家庭用に設置する際の架台や交流変換装置、工事費なども含めるとWあたりの単価は650円程度になる。≫

しかも、「標準的な4kWタイプで一戸当たり約300万円」のうち、太陽電池本体の価格は70万円程度だ。それが7万円で済むようになれば227万円にコストダウンが可能だが、肝心のことが抜けている。変換効率だ。従来タイプは15%で計算しているので、それが3.8%しかないとすると、4倍の面積が必要となり、設置費用分230万円も4倍かかることになる。
つまり、
230万円X4+7万円=924万円
ということになる。

さすがにこれでは酷過ぎるので、別の計算方式で考えてみよう。

この素材は圧延可能なのが利点で、薄っぺらく加工することができる。金属かプラスチックの基盤に太陽電池の箔を貼り付けてそれに防水コーティングすればいいだけで、基盤に鉄を使えばほとんどトタン板だ。同サイズのパネル1枚の価格は1万円を切ることも可能である。
通販でこれを購入して自分で屋根に数枚乗せる程度なら人件費もいらない。見てくれはともかく安上がりである。
後は、装置と配線工事だが、装置の値段は量産化すれば10万円以下で済みそうだ。家庭電源への配線工事はさすがに電気屋に任せた方が安全だが、せいぜい数万円といったところだろう。
夜間も使えるようにするには蓄電装置も必要だが、これはピンからキリまである。

問題なのは必要電力を確保するための面積である。1kWの電力を発生させるのに、従来型では7m2が必要で、4kWの場合は30m2だった。一般家庭の場合屋根の南側半分にソーラーパネルを敷き詰めた状態である。効率の悪い北側を覆っても従来型の半分の出力しか期待できないのが泣きである。

屋根全体となると、さすがに日曜大工は無理なので専門業者に頼むことになる。しかし、その場合も割高な太陽光発電専門業者にではなく一般の屋根屋に頼んだ方が得だ。60m2をトタン屋根に葺いてもらう費用は60万円程度。トタン板サイズのパネルが40枚必要なのでパネル代は40万円としておこう。

つまり合計100万円。これに装置代と配線工事で20万円追加すると、120万円。ただし、供給電力は従来型の半分だ。
どうしても4kWを確保するためには、屋根面積が120m2以上あるような豪邸に住むか、庭先にでも並べるしかない。

せっかくの豪邸もトタン屋根では外聞が悪いだろう。高級感を出すようなパネルにすることも可能だが、その場合お値段もアップすることになる。

60m2分を庭に並べてこれは日曜大工でやれば、総費用は180万円で、確かに従来型より安くあがりそうだ。

尤も、従来型でも人件費相当分を自前でやれば半分以下の値段で取り付け可能である。

ちなみにメーカーは「300万円の太陽光発電機なら15年でもとが取れる」と主張している。営業妨害をする気はないので、各自それらしいサイトに飛んで確認すればよろしかろう。 


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